こんばんは。
ご機嫌よう、MDです。
2年ぶりの投稿は、私たちのマイシアターである「飯田橋ギンレイホール」についてのお話、“名画座のある暮らし 第二弾”を綴らせていただきます。
この秋、飯田橋ギンレイホールは終幕を迎えました。(飯田橋ギンレイホール (ginreihall.com))
飯田橋・神楽坂の地で約48年、「昔ながらのレトロな雰囲気」と「2本立ての映画上映」で多くのファンを魅了し続けてきた名画座。新型コロナの大打撃をクラウドファンディングなどでなんとか凌いできていたものの、「建物の寿命」という避けては通れない壁に再び直面し、ついに閉館という決断が下されました。
ギンレイのない日常はどこか物足りなさを感じるとともに、ふと寂しさを覚える今日この頃です。
今回は、私たちにとって『まちなか映画館』が単なるエンターテイメントとしての役割を超え、人生を豊かにするかけがえのない「まちなか機能」の一つとなったことについて、これまでの5年間の経験を交えてご紹介できればと考えています。
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目次
1.人生をもう一歩豊かにする「マイ・シアター」という存在
①名画座が与えてくれたもの
“名画座のある暮らし”が始まったのは今から5年前。この長いようで短い年月の中で得られたものがあります。それは純粋な「娯楽」だけでなく、自分を未知の世界へと誘ってくれる「教養」と「体験」の数々でした。
新社会人になるタイミングで偶然会社の近くであった東京・飯田橋に越してきたのをきっかけに、名画座通いが始まりました。最初こそ物珍しげな「娯楽」として気になる作品を目当てに足を伸ばす程度の存在でしたが、せっかく近くに住んでいるのだからと試しに購入した年間パスポート(年会費1万円)という『いつでも行ける気軽さ』を手にしてからは、日常生活になくてはならない存在になりました。
前回記事でもご紹介した通り、この映画館の素晴らしさは、比較的最近のトレンドを捉えた国内外のテーマ性のある2本立てのセレクトにあると考えています。
わざわざ足を運んで観ようとは思わないような作品に出会える環境があることやワクワク感はもちろん、その回のアタリ・ハズレにかかわらず、自分の中に欠如していた「教養」が一つ、二つと満たされていくような幸福感を味わうことができるのです(大人になってくると勉強したくなるやつです笑)。
つまり、『自分で選んで観る』ようなこれまでの鑑賞スタイルから、映画館側でテーマ性を持って厳選された作品を『与えられて観る』という観賞スタイルに変化することで、自分の考えだけでは得られないたくさんの「知見」や「経験値」をスクリーンを通して蓄積することができ、人生をより豊かに彩ってくれるのだと確信しています。そんな素晴らしい映画館での体験がとてつもなく強い力で私たちを映画の世界へ引き摺り込んでいったのだと思います。
②「マイ・シアター」を持つことの意義
スマートフォンの普及や4G/5G社会の到来により情報のやりとりが容易に行える現代(特にコロナ以降)では、NetflixやAmazon prime、abemaTVをはじめとしたサブスクリプションサービスの普及によって映像コンテンツがより生活に身近なものになっています。家の内外関係なくいつでもどこでも映画やドラマ、アニメといった映像コンテンツを観ることができるというのは本当に画期的ですよね。また、自分がそうであるように、家にTVを持たない若者もちらほらと増えてきているように思います。
一方、こうして映像体験がスマホ一台で完結するようになっていることが、リアルな映画館という場所の価値を見直すことにもつながっています。便利で快適なサブスクでの映像体験の限界というのもある気がします。
例えば「ながら見」で雑に観賞してしまったり、2時間も集中して見れなかったり、流行や口コミについつい流されてしまったり(あくまで自分好みの映画にしか出会えない)、、、といったことありますよね。
映画館というリアルな場所に行くことで音響設備や大画面を通して集中して鑑賞することができますし、あえて家の外に「マイ・シアター」を持つことで、自分の意思の外にある様々な体験に遭遇することにもつながると思います。
ここでお伝えしたかったのはどちらが良い悪いという話ではなく、どちらも上手に活用することでより人生を豊かにすることができるのではないかということです。
多様なコンテンツをスマホ一つでいつでもどこでも手に入れられる時代だからこそ、裏を返せば名画座のようなリアルな場所や環境に価値があるのではないかという気づきなのです。
2.「飯田橋ギンレイホール」に学ぶ、『まちなか映画館』の可能性
「マイ・シアター」であるギンレイが幕引きを迎えるにあたり、映画運営など全く知らないど素人ながらに、今後の『まちなか映画館』の可能性について考えてみました。
ポイントは大きく2点あります。
「①映画作品のキュレーション」と「②まちとの距離が近い」という点です。
① 映画作品のキュレーション
一つ目は、様々なコンテンツが飛び交うこのご時世で、「自分で選ぶ」だけではなく、「セレクト作品を味わう」という美術館のような鑑賞スタイルに価値があるということ。
先にも述べたように、普段自分では手に取ることのないような作品と出会えるというきっかけを与えてくれるのが『まちなか映画館』の持つ特徴です。年間パスポートや2本立てとの相性も高く、手軽な価格帯で出入りの自由度を持たせる(=敷居を低く設定する)ことで、近所に住んでいたり働いている人にとって身近な「マイ・シアター」になっていく可能性は十分にあり得ると思います。映画館として維持していくためには、どんな人でも行きやすい地域に根付いた金額設定というのが大事なのかもしれません。
また、映画館ごとの個性でもあるので一概には言えないかもしれませんが、上映する作品のセレクトには一定のテーマや関連性を持たせることで、より濃度の高い知見や体験を提供できるのではないかと考えています。実際に、飯田橋ギンレイホールでは、社会問題や政治、史実、恋愛、性的マイノリティ、人種差別等々の多岐にわたるジャンルの映画を2本立てで上映(過去の上映作品一覧 | 飯田橋ギンレイホール (ginreihall.com))することで、それぞれの映画の感想はもちろん2本の映画の関係性を考察してみる楽しさがあります。さらには次の組合せがどんどん楽しみになる(=リピート客が増える)ような仕掛けが施されていたように思います。
② まちとの距離が近い
二つ目は、映画館に入って10秒でスクリーンにアクセスできるという、シネコンにはない強みが発揮できるのではないかということ。
『まちなか映画館』とシネコンの大きな違いは、地域に根づいているということです。シネコンはハイスペックな映像・音響環境や大画面など、まさに時代を先駆けて新しい体験を味わうことができる場所です。一方で、飯田橋ギンレイホールは、年間パスポートがあることや予約不要であることによる通いやすさ、シンプルな2本立てで客層が幅広い年齢層にわたっています。
『まちなか映画館』ならではの新しいものには出せない上品でレトロな雰囲気はもちろん、上映作品を調べることやチケットを毎回購入する手間がないことで、映画館に出向くハードルが下がるということは大きな特徴かもしれません。どうしてもエントランスから遠くあらゆる活動がビル内で完結してしまいがちなのがシネコンの特徴ですが、『まちなか映画館』は入ってすぐに座席まで辿り着くことができ、まちとの距離が非常に近いという点に可能性を感じています。
例えば、地域のカフェ・レストランと連携して「映画館のパスポートを持っていれば〇〇%引き」というような活動など、まちなかの様々なコンテンツと相互に利用促進し合うことで、映画館を訪れた人がまちに出てちいさなカフェを楽しんだり、地域を知ったりする仕組みをつくることができ、結果的に映画館もまちなかもWin-Winな関係を築くことができるのではないでしょうか。
3.価値あるものと持続可能性について
最後に、こうした価値あるものを如何に持続させていくかということを簡単に考えて終わりたいと思います。
今回飯田橋ギンレイホールは①建物の老朽化と②移転先の枯渇という二つの壁に直面しました。築48年の本体を建替えることに加えて、映画館ほどの規模を収容でき音響設備等を十分に満たすような移転先を見つけるのは難しいことなのだろうと思います。
地域に根ざしてきた映画館だからこそ、お客さんの心を離さないでいられるかは大事だと思います。例えば、再開するまでの間、年に数回イベント的にまちなかのパブリックスペース(公園や外堀)で上映するなどといった縮小・分散開催も可能かもしれません。このような地域での活動は、地域に根ざしてきた映画館であるからこそできる活動であるとも思うのです。
『まちなか映画館』があることでまちにより多くの人が訪れ、愛着を持ち、地域が潤う。まちを訪れる人が増えたり、まちにおもしろいお店が増えたりすることで、今度は映画館に訪れる人も増える。
『まちなか映画館』を通じて、地域内外の人が繋がり助け合うゆるやかな関係が育まれれば、まちとして価値ある映画館を守っていけるのではないでしょうか。
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以上、 5年間に渡る“名画座のある暮らし”を通して得た私たちなりの気づきをご紹介しました。我々のしがない日常にたくさんの彩りを与えてくれたギンレイホールには感謝しかありません。本当に居心地よく最高の居場所でした。
ギンレイ、今まで本当にありがとう。
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toshinismでは、ルームシェア生活での発見や気づきを軸に、広く都市に住まうことについて発信していく予定です。
皆さんが当たり前に行っている日々の暮らし。
それは、たかが暮らし、されど暮らし。
まずは、多様な暮らしのなかの小さな気づきなどを通して都市に住まうことの豊かさを考える記事を “〇〇のある暮らし”というタグで書いていきます。
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それではまた
筆:MD